事業用テナントの原状回復は拒否できない?

事業用テナントの原状回復は拒否できない?

オフィス・事務所・店舗など、事業用に借りたテナントを退去する際には、借り主は必ず原状回復を行わなければなりません。このことは、法律によってあらかじめ決められています。

しかし、そもそも賃貸において、貸し主と借り主のあいだにはどのようなルールが、どうやって決められているのでしょうか。必ず原状回復を行わなければならないというのは、何によって取り決められているのでしょう。

マンションやアパート、そしてオフィスビルなど事業用の賃貸についても、建物の貸し借りは「借地借家法」というものによって詳しく定められています。一体どのような法律なのか確認してみましょう。

借地借家法とは

まず、借地借家法でいう借家とは、賃料を支払って他人の建物を借りることをいい、一棟まるごと借りる場合だけでなく、その一部を借りる場合も含みます。たとえば、居住目的でマンションの一室を借りる場合や、事業用にオフィスビルの一部を借りる場合がこれにあたります。

建物とは、一般的に土地に定着し、壁と屋根があり、住居用や事業用に利用できる永続性のあるものです。

根本的な物の貸し借りについては民法で広く定められていますが、民法では目的となるものを限定しておらず、建物の貸し借りについて充分な取り決めがされているわけではありません。

そのため、特殊性があり生活に密接に結びついている建物の賃貸借について、細やかなルールを特別に制定した法律が借地借家法です。原状回復についての記述もこの中にあります。

原状回復について更に詳しく取り決めたものとしては原状回復ガイドラインが作成されていますが、これは事業用の賃貸を想定したものではないことに留意しなければなりません。

事業用の賃貸で対象となるのは

さて、事業用の賃貸借で借地借家法が適用となるのはどのような場合でしょうか。

まず、オフィスや事務所、店舗、倉庫などとして事業用に建物を借りるときには、一棟全体であっても一部であってもおおむねこの法律が適用となります。目的が事業用でも、この法律自体の適用条件に居住用との違いはありません。

また、ひとつの場所で複数の店舗が事業用にマーケットを構成しているときも、各店舗に独立性があれば借地借家法が適用されることがあります。

ただし、事業用にデパートの売り場で商品陳列棚やケースを借りて商売をする「ケース貸し」などはこれに当てはまらず、借地借家法は適用されません。個々の契約内容をよく確認してみましょう。

事業用の賃貸におけるオーナーとテナントの関係性

このような借地借家法によって、貸し主と借り主にはそれぞれ権利と義務が定められています。原状回復もその中のひとつです。

居住目的でも事業用でも、この構図は基本的に変わりません。ここでは事業用のケースを想定して、オーナーとテナントの関係を整理してみましょう。

【オーナー】

・権利
賃料請求権、明け渡しの際の原状回復請求権
・義務
建物を使用収益させる義務、建物の修繕義務、必要費償還義務、有益費償還義務

【テナント】

・権利
建物を使用収益する権利、必要費償還請求権、有益費償還請求権
・義務
賃料支払義務、建物の保管義務、明け渡しの際の原状回復義務

※必要費とは修繕費など管理に必要な費用で、有益費の償還請求とは造作買取請求などのこと。

このようにして事業用の賃貸でも両者の権利と義務は表裏一体となっており、それぞれの権利を守るための義務を負っていることになります。

原状回復はこのように必ずしなければならないこととして定められているため、賃料の支払いを拒否できないのと同じく、原状回復自体を拒否することはできません。

もし費用が高額すぎるなど納得のいかない部分があれば、原状回復そのものを拒むのではなく、その内容を見直すことで適正な原状回復を行い、お互い納得できる形での退去を目指しましょう。