原状回復において、相見積もりは有効か?

原状回復において、相見積もりは有効か?

オフィス・事務所・店舗などのテナントを退去する際、原状回復の費用が思っていたよりも高額になってしまったらどうすればよいのでしょうか。

多くの場合、入居テナント側は価格を下げてもらうために、相見積もりをとるなどして他社との比較による交渉を試みます。しかし、これはあまりうまくいきません。それには理由があるのです。

指定業者に対する 相見積もりの効果は期待薄

原状回復には、2つのパターンがあります。

まず、1つ目のパターン。

工事を行う業者が指定されていない場合は、もちろん 相見積もりをとることは有効です。相見積もりをとって金額と内容を比較し、最終的に希望するところに施工を依頼すればよいのです。

そして、2つ目のパターン。

問題はこちらになるのですが、原状回復を行う業者は、オーナーによって指定されている事が多いのです。この場合、入居テナント側は業者を自由に選ぶことができません。複数のところから相見積もりをとって比較してから決定できる、個人の引っ越しのようなケースとは勝手が違います。

そして、このような指定業者は、相見積もりをとってみると多くの場合費用が相場と比べ高くなっていることがわかります。しかし、オーナーと直接交渉して業者の変更を要求してもあまり了承されることはありません。

オーナーにとって原状回復は次の入居者を探すため、また、己の所有物でありこれからも貸し出していく建物の価値を維持するために必要不可欠な事であり、どのような仕上がりになるかわからない業者に施工を任せたくはないからです。

また、指定業者にとっても、工事を行うことが決まっている以上わざわざ値下げに応じる理由はありません。相見積もりを提示して他社の金額と比較されたとしても、それらが競合相手となるわけではなく、価格競争を行う意味がないのです。よそはもっと安いと主張されたところで、あまりに極端でなければ価格設定は自由であり、よそより高い単価を設定してはならないわけではありません。

そのうえ明け渡しの期日が決まっていれば、テナントにはそれまでに原状回復を完了させる義務があります。期日までに原状回復を終えなければ遅延損害金が発生してしまうので、納得がいかなくても合意するしかなくなってしまうのです。そのため、オーナー側は要求に応じないままずるずると話を先延ばしにして期日が近づくのを待っていればいいという構図になってしまいます。

このような理由から、結局のところ 相見積もりを根拠に交渉する事はあまり有効とは言えません。

多少減額に応じてくれることもありますが、その金額はせいぜい10%程度にとどまり、相見積もりを根拠にした交渉では大幅な費用の削減には繋がらないのです。費用を削減するためには、もっと根本的な問題の解決に取り組む必要があります。

交渉すべきポイント

原状回復の費用を削減するために行うべき交渉は、「値切り」の要求ではありません。上記のように、総額や単価の単純な値下げは、相手にとって応じる必要がないためあまりうまくいかないからです。

そこで重要なのは、原状回復を行う範囲を精査することです。

原状回復には、本来テナントが負担する必要のない範囲が含まれていたり、必要以上の人員や資材が確保されていたりすることがあります。

このような点について指摘すれば、オーナー側も交渉に応じないわけにはいきません。テナントが費用を負担する原状回復において、過剰な工事を行ってはならないからです。

主張にきちんとした根拠があれば、お互いに納得して原状回復の内容を見直すことができます。原状回復の範囲が適切かどうかを判断するには、専門的な知識が必要です。プロの力を借りて、第三者に査定してもらうことが望ましいでしょう。