資産除去債務と原状回復工事とは

資産除去債務と原状回復工事とは

オフィスや事務所、店舗などの原状回復工事についての計画は「今のところ予定がないから」では済まされません。入居すると同時に、退去も確実な将来の予定に含まれるのです。

近年、原状回復工事についてそのように考え方を改めなければならない風潮は大きくなっています。

そのきっかけのひとつが、企業が将来負担することになる原状回復工事などの費用を財務諸表に反映させようと導入された「資産除去債務に関する会計基準」です。

全文 : 企業会計基準第18号 資産除去債務に関する会計基準
https://www.asb.or.jp/asb/asb_j/documents/docs/aro/aro.pdf (企業会計基準委員会より)

資産除去債務とはどのようなものなのか、原状回復工事とはどのように関係してくるのかを簡単に確認してみましょう。

資産除去債務とは

資産除去債務に関する会計基準によれば、資産除去債務とは「有形固定資産の取得、建設、開発又は通常の使用によって生じ、当該有形固定資産の除去に関して法令又は契約で要求される法律上の義務及びそれ に準ずるもの」とあります。

つまり建物の解体や修繕のために必要になる費用や、その際発生する有害物質(アスベスト等)を法律で定められた方法で除くための費用などが、資産除去債務として扱われるということです。そして、原状回復工事の費用もこれに含まれることになるのです。

このような企業が将来負担することになる費用を、あらかじめ負債として計上し財務諸表に反映させるため、資産除去債務に関する会計基準が平成22年度より適用されました。そのため、特に上場企業やその子会社などはこれに従わなければならないことになります。

資産除去債務をあらかじめ財務諸表に反映させるべきとの考えは、以前から米国で導入されています。そのため、日本の会計基準と国際財務報告基準(IFRS)との差異を縮小することを目的としたプロジェクトの中で検討が進められてきました。

資産除去債務が財務諸表に加えられることは、企業が将来負担する費用が明らかになることであり、投資情報としても役立つのです。

資産除去債務の算定には原状回復工事費用の適正化を

さて、あらかじめ資産除去債務を算定しなければならないということは、そこに含まれる原状回復工事の費用を見積もっておかなければならないということです。

もちろん最終的な金額は退去の際に決定されることになりますが、おおよその金額は把握しておかなければなりません。

ここでは資産除去債務に関する細かい会計上の処理については省略しますが、原状回復工事との関連について簡単に整理しておきましょう。

資産除去債務に関する会計基準が適用されたことで、項目として反映されていなかった以前の状態と比べると企業の損失計上額は増大することになってしまいます。そうすると利益が圧迫され、財務諸表上の損益状況は見た目が悪化することになってしまうのです。

資産除去債務には原状回復工事の費用が含まれるので、原状回復工事のコストが削減されれば資産除去債務の額も小さくなります。そのため、これまで以上にコスト削減のもつ意味は大きくなってくるのです。

一般的な原状回復工事には、指定業者による高額の施工、通常損耗や共有部分が範囲に含まれるなど、必要以上の負担が強いられている場合があります。このような場合見積もりは高額となり、資産除去債務を増大させてしまうのです。

そのため正確な査定を行い、原状回復工事の適正化をすれば、正しい資産除去債務の算定を行うことができます。原状回復工事のコストが削減されれば、損失計上額を縮小することができ、財務諸表の健全化というメリットがもたらされるのです。

原状回復工事の費用をめぐる問題は、もはや退去の際に生じる支出だけの問題ではなくなっているということです。